で寝る。
今夜はよく食べた、自分ながら胃袋の大きいのに呆れた。……
友はよいかな、旧友はことによいかな。
奥さんに嫁の事を頼んで、さんざヒヤカされた。
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・雪ふれば雪を観てゐる私です
・ひとりで事足るふきのとうをやく
・孤独であることが、くしやみがやたらにでる
・雪がふるふる鉄をうつうつ
・火の番そこからひきかへせば恋猫
・更けて竹の葉の鳴るを、餅の焼けてふくれるを
   改作一句追加
・焼いてしまへばこれだけの灰が半生の記録
   木郎第二世の誕生をよろこぶ
 雪あかりの、すこやかな呼吸
[#ここで字下げ終わり]

 二月十日[#「二月十日」に二重傍線] 雨。

よく寝た、雨で八代の鶴見物は駄目。
十時の汽車で帰ることにする、白船君に切符まで買うて貰つて気の毒だつた。
十二時帰庵、樹明君がやつてくる、酒井さんがやつてくる、磯部さんがやつてくる。……
酒四升、鰒大皿、飲めや唄へや、踊れや。…………
とろ/\どろ/\、よろめきまはるほどに、とう/\動けなくなつて宿屋に泊つた。
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・芽麥の寒さもそこらで雲雀さえづれば
・冬ざれの山がせまると長いト
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