野菊、秋草がうつくしい。
夜は酒を持つて宿直室の樹明君を訪ふ。

 十一月十二日[#「十一月十二日」に二重傍線] 曇。

寒くなつた、草が枯れるばかり。
ホントウがウソになつたり、ウソがホントウになつたり、澄んだり濁つたり。――

 十一月十三日[#「十一月十三日」に二重傍線]――廿一日[#「廿一日」に二重傍線]

死なないでゐるだけだつた!

 十一月廿二日[#「十一月廿二日」に二重傍線] 曇。

冬がいよ/\近寄つて来た。
山口句会へ。
身辺整理、私は dead rock を乗り越えることが出来たゞらうか。

 十一月廿三日[#「十一月廿三日」に二重傍線] 晴――曇。

落葉しつくした柿の木、紅葉してゐる櫨の木。
父、母、祖母、姉、弟、……みんな消えてしまつた、血族はいとはしいけれど忘れがたい、肉縁はつかしいがはなれなければならない。……

 十一月廿四日[#「十一月廿四日」に二重傍線] 曇。

しぐれ、冬らしい寒さ、火燵の仕度をする。
腹いつぱい麦飯を食べた。
片隅の幸福[#「片隅の幸福」に傍点]が充ち満ちてゐるではないか。
Tさんだしぬけに来庵、酒を貰ふ、句集を買つて下さつた。
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