冷たい。
明方やつと眠りついたと思つたら、恋猫のために眼覚めさせられた、いがみあひつゝ愛し、愛しあひつゝいがむのが、彼等の此頃の仕事だ、どうすることもできない本能だ[#「どうすることもできない本能だ」に傍点]。
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旧正月まへ
・こゝろたのしくてそこらで餅をつく音も
・更けてひとり焼く餅の音たててはふくれる
・みぞれする草屋根のしたしさは
霜晴れの、むくむくと土をむぐらもち
ふるつくふうふういつまでうたふ
改作
ほつと夕日のとゞくところで赤い草の実
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二月朔日[#「二月朔日」に二重傍線] 晴。
もう二月になつた。……
ぶら/\歩いて、酒と魚とを買うて戻つた。
何となく腹工合が悪い、嫌な夢を見た。
今日は一句もなかつた、それでよろしい。
二月二日[#「二月二日」に二重傍線] 曇、ばら/\雨。
緑平老からの手紙まことにありがたし。
梅の花ざかり、そこらを歩くとほのかに匂ふ、椿の花も咲きつゞけてうつくしい。
樹明君に招かれて、夕方から学校の宿直室へ出かける、酒と飯とをよばれる、すこし飲みすぎて心臓にこたえて苦しんだが
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