]。
□芸術的野心、作家的情熱。
□物そのものを味はひ楽しむ心境[#「物そのものを味はひ楽しむ心境」に傍点]。
□事実と真実 actuality reality.
□実体――物質。
 作用――機能。
□人間性、社会性。
 思想性、芸術性
□俳句する[#「俳句する」に傍点]、そのことが私の場合では生活するのである[#「そのことが私の場合では生活するのである」に傍点]。
 俳句のための俳句[#「俳句のための俳句」に傍点](芸術至上主義である)、仏教のための仏教と同様に。
[#ここで字下げ終わり]

 七月十五日[#「七月十五日」に二重傍線] 十六日[#「十六日」に二重傍線] 十七日[#「十七日」に二重傍線] どうやら梅雨もあがつた。

私は毎日寝てゐた、……カルモチンかダイナマイトか。……
自己省察は、あゝ、哀しい。

 七月十八日[#「七月十八日」に二重傍線] 半晴半曇。

身辺整理、――掃除、洗濯、佃煮、等、等。
天地一切おだやかな風光[#「風光」に傍点]。――
蝉、きりぎりす、蛙、小鳥、草、木、雲、蝶、蟻、そして私。
酒はとうていやめられないとすれば、節酒[#「節酒」に傍点]して、そして生きてゆくより外ない私である。
くよくよするな、すなほにおほらかに、けちけちするな。
しづかな一歩、たしかな一歩、あせらずたゆまず一歩一歩、その一歩が私の生死であり、私の生活である。
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   井手君に
・待ちきれないでそこらまで夕焼ける空
・柱いつぽんをのぼりつくだりつ蟻のまいにち
・ひるねの夢をよこぎつて青とかげのうつくしさ(松)
   改作
・ひとりとんでは赤蛙(松)
   改作
・暮れるとやもりが障子に恋のたはむれ
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 七月十九日[#「七月十九日」に二重傍線] 晴曇。

身心安静――清浄といつてもよからう。
桔梗が一りん咲いた。
アルコールが私の身心をどんぞこへまで陥れた、私は起ち上つた、そして甦りつつあるのである。……
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・蝉もわたしも時がながれてゆく風
・はなれてひとりみのむしもひとり
   それをくれた黎々火君に
・草はしげるがままの、かたすみの秋田蕗
・彼のこと彼女のこと蕗の佃煮を煮つつ
・月がいつしかあかるくなればきりぎりす(雑松)
・それからそれへ考へることの、ふくろうのなきうつる
 ゆふべいそ
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