ずめ、恥知らずめ。
七月四日[#「七月四日」に二重傍線] 五日[#「五日」に二重傍線] 曇つたり、降つたり、晴れたり。
私自身もおなじく。
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・こゝろふかくも蝉が鳴きだした
朝鮮飴 熊本をおもふ
・そのなつかしさもかみしめる歯がぬけてしまうて
・ゆふやみほつかりと咲いたか
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七月六日[#「七月六日」に二重傍線] 雨。
アルコールの逆流。
梅雨もどうやらあがりさうな雷鳴。
七月七日[#「七月七日」に二重傍線] 八日 九日 晴、曇。
身心不調、蟄居乱読、反省思索。
七月十日[#「七月十日」に二重傍線] 曇。
こゝろしづかにさびしく澄みわたる。
やまぐちの会[#「やまぐちの会」に傍線]へ出かける、途上、老乞食に逢ふ、彼と私とは五十歩百歩だ、いつものやうに湯田で入浴、ああ温泉はありがたい、Sさんのお宅でよばれる、うまかつた、それから句会、Kさん、Hさん、Aさんの青春をよろこぶ。
終列車には間にあはなかつた、飲む、飲みだしたら泥酔しなければおさまらない私の悪癖だ、とう/\Y旅館へころげこんだ。
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・自動車まつしぐらに炎天
・木かげは涼しい風がある旅人どうし
若葉の中からアンテナも夏めく
・それはそれとして草のしげりやうは
湯田温泉
夏山のかさなれば温泉《ユ》のわくところ
・おもひでの葉ざくらのせゝらぐ
・さびしがりやとしてブトにくはれてゐます
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七月十一日[#「七月十一日」に二重傍線] 曇、混沌として。
またSさんのお世話になつた、ああ。……
朝から夜まで、酒、シネマ、酒、シネマ。
やうやくにして終列車で帰庵。
七月十二日[#「七月十二日」に二重傍線] 十三日[#「十三日」に二重傍線]
寝てゐるほかない、自分を罵るほかない。
七月十四日[#「七月十四日」に二重傍線] 晴れたか、曇つたか。――
ぼんやりしてゐるところへ、黎々火君だしぬけに来庵、万事許して貰つて、そして、酒と肴とを奢つて貰ふ。
別れてからまた飲んだ、今夜の酒はほんとうに恥づかしい酒[#「恥づかしい酒」に傍点]、命がけの酒[#「命がけの酒」に傍点]だつた。
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ぐうたら手記
□現実――回光返照――境地的[#「境地的」に傍点
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