描写、うたふ[#「うたふ」に傍点]といふこと。
・平凡と常套。
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即時而真 当相即道
生々如々
春有百花秋有月
夏有涼風冬有雪
若無閑事挂心頭
便是人間好時節
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七月一日[#「七月一日」に二重傍線] 曇、また降りだした。
身心一新、さらに新らしい第一歩[#「新らしい第一歩」に傍点]から。
すなほな、とらはれない行持。
午前ちよつとしようことなしに街のポストまで、出水の跡がいたましい。
いつもの癖で、今日もなまけた、原稿も書かなかつたし、書債も償はなかつた、書くべき手紙も書かなかつた。……
二つの出来事があつた、それは私の不注意を示す好例だつた、質屋で誤算のままに利子を払ひすごしたこと、そしてうつかりしてゐて百足に螫されたこと。
注文しておいた酒をとうとう持つてきてくれなかつた、失念したためか、信用がないためか、……どちらでもよろしい、……酒に囚はれるな。
私がここに落ちついてから、そして行乞しなくなつてから、いつとなく私は横着[#「横着」に傍点]になつたやうだ、事物に対して謙虚な心がまへ[#「謙虚な心がまへ」に傍点]をなくしてしまつたやうである、あさましい事実だ、私は反省しつゝ、ひとり冷汗をかいた。
何となく寝苦しかつた、ペーターのルネツサンスに読みふけつた。
七月二日[#「七月二日」に二重傍線] けふもまだ降つてゐる。
こころしづかにしておもひわずらふことなし[#「こころしづかにしておもひわずらふことなし」に傍点]。
雨は悪くない、しみ/″\としたものがある、風はよろしくない、いら/\させる。……
雨水がバケツにたまつて水を汲まなくてもすむ、汚れた鍋や茶碗や、みんな雨が洗つてくれる。
やつと書債文債をかたづける。
酔中漫言――
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一杯東西なし
二杯古今なし
三杯自他なし……
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酒がきた、樹明君を招く、それから、ほろ/\とろ/\どろ/\ぼろ/\ごろ/\。
………………………………………………………………………
七月三日[#「七月三日」に二重傍線] 雨。
悪日、悪日の悪日。
愚劣な山頭火[#「愚劣な山頭火」に傍点]を通り越して醜悪な山頭火[#「醜悪な山頭火」に傍点]だつた。
恥を知れ、恥を知れ、恥を知れ、恥知らずめ、恥知ら
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