を養ふのだ、私の身心は荒んでゐる。
○病痾は、私にとつては一つの天恵だ、これは悲しい事実であるが、合掌して味到さるべきものだ。
○本然の自己に帰つて落ちついた安らかさ[#「本然の自己に帰つて落ちついた安らかさ」に傍点]。
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・草も木もうち捨ててあるところ茶の花
・雨ふる落葉おちつく
・雑草、どこからともなくレコードうた
・茶の花さいてここにも人が住んでゐる
病中
・寝てゐるほかない茶の花のいつまでも咲いて
・百舌鳥のするどくぬける歯はぬけてしまふ
旅
・みちはすすきへ、すすきをくぐれば水
[#ここで字下げ終わり]
十一月六日[#「十一月六日」に二重傍線]
秋時雨、雨の音と百舌鳥の声と柿落葉と。
M君からの返信はありがたかつた、ほんたうにありがたかつた。
あまり沈欝になるので、キレイ一升借りて、イワシ十銭ほど買うてきて、チビ/\飲みはじめたが、そして待つともなく樹明君を待つてゐたがやつてこないので、学校まで出かけて訳を話したが、とても忙しくて行けないといふ、そこで私自身を持てあまして街へ出てみたけれど面白くないので、鮨を食べて戻つて、すぐ寝た。……
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