ある。……
移植した三本の桐苗がみんなつい[#「つい」に傍点]たらしい、二三年もたつたら青々として夕日をさえぎつてくるだらう。
樹明来庵、飯を食べたい、そして銭を三十銭貸してくれといふ、昨夜から飲んで帰らないのださうな、目前酔うてゐないのがうれしくて、飯を炊き銭入をはたいた。……
焼酎を呷る、焼酎が焼酎をよぶ、酔うた、泥酔した、しかし、庵にかへつてぐつすり寝た。
酔うても酔はないでも、悠然として変らない身心となりたい。
シヨウチユウよ、サヨナラ。
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家いつぱいに昇る日をまともに郵便を待つ
・たづねてくれるみちの草だけは刈つておく
・郵便やさんがきてゆけばまた虫のなく
すこし風が出て畳へちつてくるのは萱の穂
・ひとりひつび[#「び」に「マヽ」の注記]り竹の子竹になる
・うれしいこともかなしいことも草しげる
・生きたくもない雑草すずしくそよぐや
あをあをと竹の子の皮ぬいでひかる
・竹の子竹となつた皮ぬいだ
・竹の子伸びるよとんぼがとまる
[#ここで字下げ終わり]
七月二日[#「七月二日」に二重傍線]
曇、酔覚のむなしさ、はかなさ、終日読書。
[#ここから3
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