て多少の銭になりさうな弐冊、それが八十銭になつた、さつそく一杯、そしてS家を訪ねる、周二さんはまだ帰郷してゐない、赤の事で当局に油をしぼられてゐるらしい。
湯田の千人風呂で一浴、バスで上郷まで、新町で下車して、朝のマイナスを返す、やれ/\。
二時半帰庵、うちほど楽なものはない。
今日もまた焼酎を呷つた、それだけ寿命を縮めた。
何となく――それはウソぢやない――人心凝滞、世相険悪を感ぜざるを得ない、ダイナマイトはうづたかく盛られてある、まだ点火するほどの人間が出現しないのだ!
我儘を許されない身心――かうまで心臓が弱くなつてゐるとは思はなかつた、ああ。
△くちなしの花、その匂ひが(その色よりも姿よりも)私を追想の洞穴に押し込める。……
△アルコール中毒、ニコチン中毒、そして俳句中毒、酒と煙草と俳句とはとうてい止められない、止めようとも思はない。
△在る世界[#「在る世界」に傍点]から在るべき世界[#「在るべき世界」に傍点]へ、在らずにはゐない世界[#「在らずにはゐない世界」に傍点]へ、そして私はまた在る世界[#「在る世界」に傍点]へかへつて来た、在る[#「在る」に傍点]ところに在るべき[
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