/\T店まで出かけて、焼酎一杯、息なしに飲む、だいたい焼酎を私は好かない、好かないけれど酒の一杯では酒屋の前を通つた位にしかこたえない、だから詮方なしに焼酎といふことになる、酒は味へるけれど、焼酎は味へない、たゞ酔を買ふ[#「酔を買ふ」に傍点]のである、その焼酎がいかに私の身心を害ふかは明々白々だ、だから、焼酎を呷ることは、まあ自殺――慢性的な――今の流行語めかしていへば slow suicide だ! それはむしろ私に相応してゐるではあるまいか!
△転ぜられるところが転ずるところ[#「転ぜられるところが転ずるところ」に傍点]、そこは物心一如[#「そこは物心一如」に傍点]、自他不二だ[#「自他不二だ」に傍点]。
△腐つた物をたべてもあたらない、――こゝまでくるとりつぱにルンペンの尊さ[#「ルンペンの尊さ」に傍点]を持つてゐる。
いはでもの事をいふ私、しなければならない事をしない私。
ふと眼がさめたら、とてもよい月夜、もう十二時を過ぎてゐた、近来稀な快眠熟睡だつた。
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防府にて
・この家があつてあの家がなくなつてふる郷は青葉若葉
・青田はればれとまんなかの墓
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