ない友情以上のものが身心にしみる。……
夕方から、澄太君夫妻と共に黙壺居の客となる、みんないつしよに支那料理をよばれる、うまかつた、鶩の丸煮、鯉の丸煮、等、等、等(わざ/\支那料理人をよんで、家族一同食べたのは嬉しい)。
澄太居も黙壺居もあたゝかい、白船居も緑平居も、そして黎々火居も、星城子居も。……
私だけ泊る。
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春の波の照つたり曇つたりするこゝろ
・菜の花咲いた旅人として
日ざしうらゝなどこかで大砲が鳴る(澄太居)
・枯草あたゝかうつもる話がなんぼでも
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三月廿五日[#「三月廿五日」に二重傍線]
早く起きる、八時の汽船に乗り込まなければならない。
こゝでも黙壺君の友情以上のものが身心にしみる、私は私がそれに値しないことを痛感する。……
宇品から三原丸に乗る、海港風景、別離情調、旅情[#「旅情」に傍点]を覚える。
法衣姿の私、隣席にスマートな若い洋装の娘さん、――時代の距離いくばくぞ。
三原丸船中、――
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天気予報を裏切つて珍らしい凪、
ラヂオもある、ゆつたりとして、
人間は所詮、食べ[#「食べ」に傍
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