殺された虫の夜がふける
日だまりの牛の乳房
草の青さで牛をあそばせてゆふべ
・てふてふつるまうとするくもり
暮れてふるさとのぬかるみをさまよふ
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五月四日[#「五月四日」に二重傍線]
放下着、放下着。
やつぱり酒はうまい、雑草はうつくしい。
山口まで、湯田で一浴、廿日間の垢をおとす、おとなしく帰庵、ふとんのしきふをかゝへて(昨日から拾壱円ばかり買つた)。
山のみどり、鯉のぼりのへんぽん、蛙げろ/\。
粉末松葉を飲みつゝ、源三郎さんをおもふ。
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・向きあうて湯のあふるゝを(湯田温泉で澄太君と)
風はうつろの、おちつけない若葉も
やつと家が見えだした道でさかなのあたま
・おもひではそれからそれへ蕗をむぎつつ
たどんも一つで事足るすべて
[#ここで字下げ終わり]
五月五日[#「五月五日」に二重傍線]
けさも早起、晴れて端午だ。
身辺整理、きれいさつぱり、針の穴に糸が通らないのはさびしかつた。
さみしくなるとうぐひすぶゑ[#「うぐひすぶゑ」に傍点](叡山土産の一つが残つてゐた)をふく、ずゐぶんヘタクソ鶯だね、そこが山頭火だよ
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