]、わたし[#「わたし」に傍点]はカルモチンによつてゞもゴマカすより外はない!
シヨウチユウを二杯ひつかけてきた、むろんカケだ、そして樹明君を訪ねて話す。
風、風がふく、風はさびしい。
昼寝、何ぞ夢の多きや、悪夢の連続だつた。
ほうれん草を摘んで食べた、ほうれん草はうまいかな。
ゆふべ、ぢつとしてゐるにたへなくて山をあるく、この身心のやりどころがないのだ、泣いても笑ふても、腹を立てゝも私一人なのだ。
蓑虫がぶらりとさがつてゐる、蓑虫よ、殼の中は平安だらう、人間の私は虫のお前をうらやむよ。
炬燵をのけたら、何となく寂しい、炬燵は日本の伝統生活を象徴する道具の一つである、家庭生活が炬燵をめぐつて営まれるのである、囲爐裏がさうであるやうに。
火といふものはまことになつかしい、うれしい、ありがたいものである、ぬくい[#「ぬくい」に傍点]といふよりあたゝかい[#「あたゝかい」に傍点]といふ言葉がそれをよく表現する、肉体をぬくめると同時に心をあたゝめてくれる。
乞食や流浪者はよく焚火をするといふ、私もよく火を焚くのである、そして孤独のもつれをほぐすのである。……
待つてゐた敬坊がやつてきてくれた、
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