不調、さびしいとも思ひ、やりきれないとも感じたが、しかし、私は飛躍[#「飛躍」に傍点]した、昨夜の節分を限界として私はたしかに、年越[#「年越」に傍点]しをしたのである。
朝、冷飯の残りを食べたゞけで、水を飲んで読書した、しづかな、おちついた一日一夜だつた。

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    第三句集『山行水行』に※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]入する語句二章
 (庵中閑打坐)            (一鉢千家飯)
山があれば山を観る          村から村へ
雨のふる日は雨を聴く         家から家へ
春夏秋冬               一握の米をいたゞき
受用して尽きることがない       いたゞくほどに
                   鉢の子はいつぱいになつた
[#ここで字下げ終わり]

 二月五日[#「二月五日」に二重傍線]

天も私も憂欝だ、それは自然人生の本然だから詮方がない、水ばかり飲んでゐても仕方がないから、馴染の酒屋へ行つて、掛で一杯ひつかけた、そしてさらに馴染の飲食店から稲荷鮨とうどんとを借りて戻つた。

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