ぎまはつてゐること、そしてみんなそれ/″\に海水着を着て浮袋を持つてゐる。
一飄[#「飄」に「マヽ」の注記]を携へて網漁をやつてゐる老人がゐた、その余裕ぶりを少し羨ましく思つた。
私は二合入の空瓶を拾うて戻つた、行乞途上、般若湯を詰めて持つてあるく用意として。
ひとり蚊帳の中に寝ころんで、好きな本を読む――極楽浄土はまさにこゝにある!
緩歩不休[#「緩歩不休」に傍点]は山登りばかりの秘訣ではない、人生の事すべて然り。
[#ここから2字下げ]
    掟(改訂)
一、辛いもの好きは辛いものを、甘いもの好きは甘いものを任意持参せられたし。
一、うたふもおどるも勝手なれども、たゞ春風秋水のすなほさでありたし。
一、威張るべからず、欝ぐべからず、其中一人の心を持すべし。
                        其中庵主
    右三章                    山頭火しるす
[#ここで字下げ終わり]
夜、樹明君がバリカンを持つて来て、白髪頭を理髪してくれた、ありがたい、言語同断ありがたかつた。
机の上に蝉の子がぢつとしてゐる、殼を脱いだばかりのみん/\蝉である、今夜はこゝで
前へ 次へ
全7ページ中6ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング