・ふるさとちかく住みついて雲の峰
 水をわたる高圧線の長い影
・日ざかりのお地蔵さまの顔がにこにこ
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野菜に水をやる、栄養の水でもあれば感謝の水でもある。
△其中庵はまことに雑草の楽園[#「雑草の楽園」に傍点]であり、虫の宿[#「虫の宿」に傍点]である、草は伸びたいだけ伸び、虫は気まゝに飛びあるく。……
蜩! ゆふべの窓からはじめて裏山の蜩を聞いた。
とても蚊が多いから、といふよりも、私一人に藪蚊があつまつてきて無警告で螫すから、まだ暮れないのに蚊帳を吊つて、その中で読書、我儘すぎるかな。
△或る日はしづかでうれしく、或る日はさみしくてかなしい、生きてゐてよかつたと思ふこともあれば、死んだつてかまはないと考へることもある、君よ、孤独の人生散歩者を笑ふなかれ。
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・昼寝の顔をのぞいては蜂が通りぬける
 もつれあひつつ胡瓜に胡瓜がふとつてくる
・炎天のの[#「の」に「マヽ」の注記]虫つるんだまんま殺された
・もいでたべても茄子がトマトがなんぼでも
 心中が見つかつたといふ山の蜩よ
 今から畑へなか/\暮れない山のかな/\
   追加一句
・飯の
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