ふ次第だらう。
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街をあるけば街のせつなさ
山へのぼれば山のさみしさ
ひとりかなしみ
ひとりなぐさむ
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こんな小唄が出来るとは、私はどこまでも孤独な痴人だ!
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・山羊もめをとで鳴くうららかな日ざし
・一つが鳴けばみんな鳴く春の野の牛
・落ちては落ちては藪椿いつまでも咲く
・工夫にレールが長いエンヤラヤ
 春の野の汽鑵車がさかさまで走る
・春風のアスフアルトをしく
 水をへだてて笹鳴くやうまくなつたな
・山の椿のひらいては落ちる
・春の山をのぼる何でもない山
・山ふところはいちはやく蘭に莟をもたせ
・枯木のてつぺんで啼いてゐるのは渡鳥
・いちりん※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]しの椿いちりん
・春山をのぼる下駄が割れて
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 三月三十日[#「三月三十日」に二重傍線]

昨日の今日だから、さすがに胃腸の工合がよろしくない、酒の飲みすぎ、餅の食べすぎ、――お粥をこしらへる。
こゝろたのしく、朝、昼、晩、お粥ですました。
朝、樹明来、やつぱり昨夜は酔中彷徨だつたさ
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