いてきた雑草
 草萠えるあちらからくる女がめくら
 籠りをれば風音の煤がふる
 暮れるまへの藪風の水仙の白さ
 どこかで家が建つだいぶ日が長うなつた
・やつと山の端の三日月さん
   追加一句
 春|時化《シケ》、米がなくなつて餅がある
[#ここで字下げ終わり]

 三月廿九日[#「三月廿九日」に二重傍線]

快晴、春霜、なか/\寒い。
近郊散策、七句拾ふ。
△アスフアルトプラント(新国道舗装用の)を観る、人間と機械、機械と自然、この関係をはつきり理解しなければならない。
さくらのつぼみがふくらんだ、春、春、春だ。
新聞所載の九星表を見たら、『うか/\と山路に入つて、踏み迷ふ如き日』とあつた、足元御用心。
午後、意外にも敬治君来庵、自宅からわざ/\酒と餅とを持つて!
なかよくおとなしく飲んだり食べたり、山へ登つたり野を歩いたりした。
山から蘭を三株持つて帰つて、茶瓶に植ゑた、やんがて咲くだらう。
△日あたりのよい隠れ場処[#「日あたりのよい隠れ場処」に傍点]といふ語句を思ひついた。
夜、敬治君機嫌よく実家に帰る、樹明君はとう/\来なかつた、宴会があると聞いたから、おそくなつて、――とい
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