みち
・林も春の雨と水音の二重奏
・かろいつかれのあしもとのすみれぐさ
ママとよばれつつ蓬摘んでゐる
・藁塚ならんでゐる雑草の春
あれこれ咲いて桜も咲いてゐる
・春はまだ寒い焚火のそばでヨーヨー
・みんなかへつてしまつて遠千鳥
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三月廿七日[#「三月廿七日」に二重傍線]
どうやら霽れさうだ。
ちよつと郵便局まで、冬村君の工場でしばらく話した、花見の約束をする、ハナ(花)ノシタより、ハナ(鼻)ノシタ!
すみれ、げんげ、なのはな、いろ/\の草花が咲きはじめた。
晩酌二合、甘露の甘露だつた。
しづかな一日、小鳥が啼いて、私が考へて、そして雨。
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・工場のひゞきも雨となつた芍薬の芽
・ぬかるみ赤いのは落ちてゐる椿
雨あがり、なんと草の芽が出る出る
・けさはお粥を煮るとて春の黴《カビ》
・春さむく針の目へ糸がとほらない
春夜、どこからきたのか鼠の声
・わらやねふけてぬくい雨のしづくする
あすはお節句の蓬つむと乙女が来た
追加二句
・お彼岸まゐりの、おばあさんは乳母車
・春さむく小舟がいつさう
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三月廿
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