なかの畳へ大きな百足
[#ここで字下げ終わり]
それは大きな百足だつた、五寸以上あつた、私はぞつとして打ち殺さうとして果さなかつた。
長虫――蛇、百足、いもり、とかげ、蚯蚓――はまつたく嫌だ。
今日の食事には嘘があつた、――といふのは、日記をつけてしまつてから、飯が食べたくて、そして煙草が吸ひたくてやりきれなかつたから、私一流の、窮余の策を弄して、酒と米と煙草とを捻出したのである、――それはかうである、――A店で一杯ひつかけて(此代金十一銭)その勢でB店で煙草一包(此代金四銭、抵当として端書三枚預けて置いた!)を手に入れ、さらにC店で白米二升(此代金四十六銭)を借りて来たのである。
何と酒がうまくて、煙草がうまくて、そして飯のうまかつたことよ、私は涙がこぼれさうだつた(この涙はどういふ涙ぞ)。
五月一日[#「五月一日」に二重傍線]
くもり、だん/\晴れて、さつきの微風が吹く、雨後の風景のみづ/\しさを見よ。
山蕗を採つて煮た、半日の仕事だつた。
何日ぶりの入浴か、身心さつさうとしてかへる。
樹明来(筍と卵とのお土産持参)、うち連れて、夕の街をあるく、夜の街を飲みまはる、――いつも
前へ
次へ
全47ページ中37ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング