つた
どしやぶり、遠い遠い春の出来事
・晴れてのどかな、肥料壺くみほして(追加)
・楢の葉の若葉の雨となつてゐる
雨に茶の木のたゝかれてにぶい芽
・ゆふべのサイレンが誰も来なかつた
[#ここで字下げ終わり]
朝は、筍をたべてはお茶をのみ、晩は蕗をたべてはお茶をのんだ、昼御飯としては葱汁! 野菜デー[#「野菜デー」に傍点]だつた。
△米櫃に米があるならば、味噌桶に味噌があるならば、そして(ゼイタクをいつてすみませんが)煙草入に煙草があるならば、酒徳利に酒があるならば。――
△春があれば秋がある、満つれば缺げる、酔へば醒める、腹いつぱいも腹ぺこ/\も南無観世音、オンアリヨリカソワカ。
△飯の美味をたゝへ、胃の正直をほめよ。
夕方からどしやぶり、ふれ、ふれ、ふれ、ふれ、ふれ。
大降りの中を樹明君来庵、さつそく銀貨を投げだす、大降りの中を酒買ひにいつた、つゝましい酒だつた、樹明君が御飯をたべてくれたのはめづらしくもまたうれしいことであつた。
[#ここから2字下げ]
どしやぶりのいなびかり、酒持つて戻るに
・蛙とんできて、なんにもないよ
雨の水音のきこえだしてわかれる
わかれていつた夜
前へ
次へ
全47ページ中36ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング