ることのできない一日一夜だつた、めでたくもありめでたくもなし、喝。
戻つて来て、室内を掃除し、茶を沸かし飯を食べる。
敬坊よ、夫婦喧嘩も時々はよからう、それはほがらかでなければならない、陰惨であつてはならない。
私には喧嘩する相手もない、独相撲[#「独相撲」に傍点]でもとるか!
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・こころ澄めば蛙なく
[#ここで字下げ終わり]
昨日の二十二句は此一句に及ばない。

 四月廿四日[#「四月廿四日」に二重傍線]

晴、すべてが過ぎてしまつた! といふ気持、しかし昨夜は労[#「労」に「マヽ」の注記]れてぐつすりねむれたので悪い気持ではない。
身のまはりを片づける。
出来るだけの買物をする、――米、醤油、石油、そして焼酎一杯。
初めて春蝉をきいた、だるくてねむくなる、五日ぶりに入浴、さつぱりした、しづかに読書。
酒もよいが茶もわるくありませんね[#「酒もよいが茶もわるくありませんね」に傍点]。
F家のおばさんから、例のブチコハシをひやかされた、あゝいふ気分はとても彼女等には理解できぬらしい、喧嘩でもしたのだらうと思つてる。
三ツ葉のおしたし、葉わさびをふつて貯蔵する(敬坊
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