花の咲いてゐる
 ほそいみちがみちびいてきて水たまり
・春ふかい石に字がある南無阿弥陀仏
 春たけなはの草をとりつつ待つてゐる
・ようさえづる鳥が梢のてつぺん
 親子むつまじく筍を掘つてをり
・筍も安いといひつつ掘つてゐる
 木の芽へポスターの夕日
[#ここで字下げ終わり]
暮れてもまだ敬坊は来ない、樹明君も来ない、いら/\してゐるところへやつとやつて来た、御持参の酒を飲みつゝ話してゐると、樹明君もやつてきた、三人とも酔ふた、酔うて。――
樹明君近来の口癖はブチコワスゾである、何カヲブチコワサズニハヰラレナイホド、君は悩み苦しみ焦立つてゐる、そこで、私が先づ茶碗をぶちこはす、樹明君喜んで皿を投げつける、ガチヤンガラガラ、どうやら胸がすいたらしい。
酔つぱらつた三人は必然的に街へ出かけた、そしてまた飲んでさらに酔ふた、私と敬坊とは腕を組んで、さうらうまんさんとして駅前の宿屋に泊つた。
今夜は文字通りにどろ/\になつた、泥田を這ひまはつたのだから、からだは泥まみれだつた(こゝろはあまり汚れなかつたが)。

 四月廿三日[#「四月廿三日」に二重傍線]

明けて飲み、暮れて別れた、とにかく忘れ
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