つぱり驚く。――
夕方、電燈工夫が来て、電燈器具をはづして持ちかへつた、彼は好人物、といふよりも苦労人らしかつた、いかにも気の毒さうに、そして心安げにしてくれた。
それにしても待つてる友は来ないで、待たない人が来たものである。
こゝで敬坊と樹明君との人物について、我観論を書き添へて置くのも悪くあるまい、両君とも純情の人である、そしてそれは我儘な人であり、弱い人であることを示してゐる、純なるが故に苦しみ我儘なる故に悩む、君よ、強い人[#「強い人」に傍点]となれ、私も。
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濫作一聯如件
・みほとけに供へる花のしつとりと露
・朝風のうららかな木の葉が落ちる
仏間いつぱいに朝日を入れてかしこまりました
・山へのぼれば山すみれ藪をあるけば藪柑子
・山ふところはほの白い花が咲いて
・によきによきぜんまいのひあたりよろし
・山かげ、しめやかなるかな蘭の花
うつろなこゝろへ晴れて風ふく
・雲のうごきのいつ消えた
燃えぬ火をふくいよ/\むなし
まひるのかまどがくづれた
いちにち風ふいて何事もなし
椿ぽとりとゆれてゐる
・鳥かけが見つめてゐる地べた
・墓場あたたかい
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