げ終わり]

 四月二十一日[#「四月二十一日」に二重傍線]

曇、平静な身心、晴。
樹明君がきまりわるさうな顔をしてゐる、昨夜は脱線しないでよかつた、酔うて苦しみをごまかすのは卑怯だ。
小鳥の声がいらゞたしくなつた、恋、交接、繁殖。
蕗がだいぶ伸びたので摘む、蛇がのろ/\して驚かす。
雑草を活けかへる、いゝなあとばかり見惚れる。
山東菜を播いた。
ランプのあかりで読書。
[#ここから2字下げ]
・梨の花の明けてくる
・咲いてゐる白げんげも摘んだこともあつたが
・竹藪のしづもりを咲いてゐるもの
・蕗をつみ蕗を煮てけさは
 麦笛ふく子もほがらかな里
 雑草ゆたかな春が来て逝く
・播いてあたゝかな土にだかせる
・おもひではあまずつぱいなつめの実
・いらだたしい小鳥のうたの暮れてゆく
・ぬいてもぬいても草の執着をぬく
[#ここで字下げ終わり]
昨夜はとう/\徹夜、それだのに今夜も睡れさうにない。
△性慾をなくしたノンキなおぢいさん[#「性慾をなくしたノンキなおぢいさん」に傍点]! 私もどうやらそこまで来たやうだ(去年は性慾整理で時々苦しんだが)。

 四月廿二日[#「四月廿二日」に二重傍線]
前へ 次へ
全47ページ中26ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング