て、花見もおしまひ。
△まつたく泣笑の人生[#「泣笑の人生」に傍点]だ、泣くやうな笑ふやうな顔だ、いや、笑ふことが泣くこと、泣くことが笑ふことになつてしまつたのだから。
夜は早く寝た、灯がなくては読書も出来ないから。
[#ここから2字下げ]
・考へる人に遠く機械のうなる空
・筍を掘るひそかな筍
[#ここで字下げ終わり]

 四月二十日[#「四月二十日」に二重傍線]

雨、曇、そして晴、私の気分もその通り。
やつと古道具屋でランプを探しだして手に入れることができた、古風な新鮮味[#「古風な新鮮味」に傍点]といつたやうなものを感じる、私には電燈よりもランプが相応してゐる。
呪ふべき焼酎よ、お前と私とはほんとにくされ縁だねえ。
夜おそく樹明君来庵、何か胸に痞えるものがあるらしく、頻りに街へ行かう、大に飲まうとすゝめたけれど、私は頑として応じなかつた、とう/\諦めて寝てしまつた、善哉々々。
[#ここから2字下げ]
・街の雑音のそらまめの花
 せり売の石楠花のうつくしさよ
・シクラメン、女の子がうまれてゐる
・花がちる朝空の爆音
・草から草へ伸びる草
・せゝらぎ、何やら咲いてゐる
[#ここで字下
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