なりつけた。
[#ここから2字下げ]
 鴉が啼いて椿が赤くて
 あるきまはれば木の芽のひかり
・街はまだ陽がさしてゐる山の広告文字
・暮れのこる色は木の芽の白さ
[#ここで字下げ終わり]
私はずぼらでありすぎた、あんまりだらしがなかつた、いはゆる衣架飯袋にすぎなかつた。……

 四月十八日[#「四月十八日」に二重傍線]

晴れ晴れとした、うれしい手紙も来た、そして。――
私には財布の必要はない、郵便局で小為替の金を受けて、その足で、払ふ、買ふ、すぐまた無一文だ、さつぱりしてよろしい!
コツプ酒に酔うてゐたら、樹明君がきた、いつもとちがつて大真面目だつた。
電燈がどうしてもつかない、故障だらうと思つて電気局へ行つたら、電燈料の滞納(二ヶ月分)だから、点燈差止との事、なるほど無理もない、仕方がないから蝋燭を買つてきて御飯にする、そして寝た、寝たがえゝ、寝たがえゝ。
私の貧乏もいよ/\本格的[#「本格的」に傍点]になつてきた。
[#ここから2字下げ]
 晴れてつめたい朝の洗濯赤いもの
・よいお天気の葱坊主
[#ここで字下げ終わり]

 四月十九日[#「四月十九日」に二重傍線]

曇、雨となつ
前へ 次へ
全47ページ中24ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング