少しばかり借りて来た、あはれといふもおろかである。
銭を持たないために、いひかへれば、私はズボラのために、他から軽蔑され、自分で軽蔑した。
酔うて倒れてゐるところへ、樹明君が来た、酔うても愚痴を捨て切らない私といふ人間はさぞみじめだつたらうよ。
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・借せといふ貸さぬといふ落椿
・ここに花が咲いてゐる赤さ
・これが御飯である
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四月十三日[#「四月十三日」に二重傍線]
春にそむいて寝てゐた。――
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・夫婦で筍を掘る朝の音
・桜の句を拾ふ吸殼を拾ふ(自嘲)
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四月十四日[#「四月十四日」に二重傍線]
くもり、しづかにふりだした。
身辺整理、まづ書くべき手紙を書いてだす、それから、それから。
雀が、めつたにおとづれもしない雀が二三羽きてくれた。
昨日の夜明け方にはたしかにホトトギスの初声もきいた。
樹明来、もう夜が明ける一升罎[#「罎」に「マヽ」の注記]を持つて!
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したしや雀がやつてきてないてゐる雨
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四月十五日[#「四月十五日」に二重傍
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