、寝ころぶ
・石ころに日はさせども
・死をまへにして濁つた水の
・ひとりがよろしい雑草の花
 春の夜のひとりで踊る
 身にせまりやたらに芽ぶいてきた
 なんぼでも虫がゐる夜のふかくして
・月と雲と、水をくむわたくし
 摘んできて名は知らぬ花をみほとけに
[#ここで字下げ終わり]

 四月七日[#「四月七日」に二重傍線]

花ぐもり、雨となつた。
今朝はさすがの私も飲みたくない、飲めない、飲みすぎ食べすぎのたたりで気分がすぐれない、午前中は山野を逍遙した。
酒には溺れるべし、それ以上を求めるのは間違なり。
まづ、其中庵は其中庵臭を去れ、山頭火は山頭火臭を捨てろ、耽溺趣味、陶酔気分を解消せよ。
△宗教は阿片にあらず、現代の宗教は現代の人々を麻痺せしめるだけの魅力を持つてゐない。
ぐつすりと春のねむり。
[#ここから2字下げ]
・笹鳴くや墓場へみちびくみちの
・がらくたを捨てるところ椿の落ちるところ
・咲くより剪られて香のたかい花
・酔ふたが雨の音
・忘れられて空へ木の実のゆれてゐる
・出て見れば雑草の雨
[#ここで字下げ終わり]

 四月八日[#「四月八日」に二重傍線]

雨、花まつりの日
前へ 次へ
全47ページ中17ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング