らもどるそらまめの花
・誰か死にさうな鴉がカアとなくばかり
・穴から草の芽の空
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三月三十一日[#「三月三十一日」に二重傍線]
曇后晴。
敬坊起きるよりヨーヨー、春はのどかである、間もなく出立帰宅。
うれしいたより、とりわけて緑平老からのそれはうれしいものであつた。
友人知己へのかへしに、『老来春来[#「老来春来」に傍点]共によろしく』とも『春は春風に吹かれて』とも書いた。
いよ/\春のあたゝかさとなつた、あたゝかくなるほどプロは助かる、足袋を穿かないだけでも。
△バスのほこりも春らしい。
△酒が酒を飲む[#「酒が酒を飲む」に傍点]――むしろそれがよいではないか。
やうやくにして亡母の持越法事を営む、案内したのは樹明氏だけ、とてもしめやかな酒だつた。
樹明君が今晩ほど悲しい顔をしてゐたことはない(昨夜の酔興を自省して)、そして今晩ほど嬉しい色になつたこともない(今晩の酒によつて心機一転して)、友よ、道の友よ、お互にしつかりやりませう。
快い睡眠をめぐまれた。
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今日がはじまる日ざしを入れて
・一人が一人を見送るバスのほこり
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