ろいと、あの時代は考へてゐたが、今の私はその滓でさへろく[#「ろく」に傍点]/\飲めないではないか(現に一昨日は十銭しかないので、わざ/\新町まで出かけて滓を飲んで来たやうなみじめさだ)。
焼酎を借りる、鰯を借りる、さて酒はどこから借りださうか、窮すれば通ず、要求あれば供給あり、何とかなるだらう(醤油はF家から借りた)。
夕づつかけて樹明来、やうやく一升捻出して飲んだ、よい酒だつた、うまい酒だつた、涙ぐましい酒だつたともいへよう、ハムの一きれにもまこと[#「まこと」に傍点]があつた。
よう寝た、ぐつすりと夢も見ないねむりだつた。
△私は、すべての音響を声と観じる[#「声と観じる」に傍点]やうになつた、音が心にとけいるとき、心が音をとかすとき、それは音でなくして声である、その新らしい声を聴き洩らすな。
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・梅と椿とさうして水が流れてゐる
・庚申塚や左は街へ下る石ころ
・あさぐもりの垣根の花をぬすまうとする
太陽、生きものが生きものを殺す
・寝覚しめやかな声はあたゝかい雨
・ハムは春らしい香をかみしめる(樹明君に)
[#ここで字下げ終わり]
二月十七日[#「二月
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