熊本では特殊の理由から疳癪玉を破裂させたが、それからはまことにおとなしいものであつた、それがM君の事やS君の策やH君の態度などによつて、ぐらつきだして、しだいにむしやくしや[#「むしやくしや」に傍点]をかもしだすやうになつた、じつさい、腹の立つうちが花かも知れない、癪にさわるものがなくなつては、生甲斐がないやうになるかも解らない、とにかく虫の事だから、よくもわるくも、虫にまかしてをくか。
久しぶりに――十日ぶりぐらいだらう――入浴して顔をあたつた、せい/\した、飯の足らないのも忘れてしまつたほど。
喫茶読書、これもよかつた、古教[#「教」に「マヽ」の注記]照心といつた気持。
腹が鳴るのはさびしいものだと思つた、その声(まさに声だ)にはさび[#「さび」に傍点]さへもあるやうに感じた。
[#ここから2字下げ]
・山ふところの啼かない鳥の二羽で
・このみちどこへゆくふかう落葉して
おぢいさんも山ゆきすがたのぬく/\として
日のあたる家からみんな山ゆきすがたで
・茨の実はぬくい日ざしのほうけすゝき
・なんとなく春めいて目高のあそびも
・藪柑子、こゝから近道となる落葉
近道
前へ
次へ
全86ページ中50ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング