郵便局まで大急ぎ、三八九発送第一回、帰りみち、冬村君を訪ねて、厚司とレーンコートとを押売する、おかげで、インチキカフヱーのマイナスが払へて、めいろ君に申訳が立つといふ訳。
雪となつた藪かげで、椿の花を見つけた。
今日の御馳走はどうだ! 酒がある、飯がある、肉がある、大根、ちしや、ほうれんさう、柚子。……
△右の手の物を失ふまいとして、左の手の物を失ふ、これは考へなければならない問題である。
△酒と貧乏とは質に於て反比例し、量に於て正比例する。
雪の畑にこやしをやつた(肥料も自給自足)、これは昨夜、樹明君に教へられたのだ。
夕方、樹明君がせか/\とやつてきた、生れたといふ、安産とは何より、このさい大によき夫ぶりを発揮して下さいと頼んだ。
子がうまれたから句もうまれるといふ、万歳々々。
吉野さんが三八九会費を樹明君に托して下さつたので、それを持つてまた街へ、三八九第二回発送。
けふはほんとうにうれしい日だつた、涙がでるほどうまい酒を飲んだ、かういふ一日が一生のうちに幾日あらうか。
おだやかな私と焚火だつた。
△年をとると、いやなもの、きたないものがないやうになる、肯定勝になるからか、妥協
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