、日本人は(今日以後の若い人は、私たちより時代のちがふ若い人は別として)やつぱり、米喰ふ虫[#「米喰ふ虫」に傍点]だ。
早く、寝床にはいつて漫読する、野上八重[#「八重」に「マヽ」の注記]子さんの小説の文章の気のきいてゐるのに感心した。
それでは、けふはこれでさようなら。
書き漏らした事をもう一つ、――今夜はどうしたわけか、やたらに溜息がでる、はてめんような、これは何の溜息でござるか!
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・湯がわいてくる朝日をいれる
・枯木よりそうて燃えるあたゝかさ
・あたゝかく枯枝をひろうてあるく
・ゆふべの枯枝をひろへばみそつちよ
 夕風の枯草のうごくは犬だつた
・更けて荷馬車の、人が馬が息づいて寒い星のまたたき
・落葉鳴らして火の番そこからひきかへした
・つめたいたたみをきて虫のぢつとしてゐる
 落葉ふかく藪柑子ぽつちり
 すこし日向へのぞいて藪柑子
 ちぎられて千両の実のうつくしくちらばつて
・日向の梅がならんで満開
・夜どほしで働らく声の冴えかえる空
 冴えかえる夜でようほえる犬で
 たたずめばどこかで時計鳴る
   句賛として四[#「四」に「マヽ」の注記]句
 一日花
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