い雨。
その雨のやうな手紙二つ、俊和尚から、緑平老から。
[#ここから3字下げ]
雨がやまない、ちつとも酔はない酒を飲みつゞけてゐる
[#ここで字下げ終わり]
十二月廿九日
空は曇、私は晴。
此頃はあまり後悔しなくなつたゞけでも、私はひらけてきたやうだ。
南無元寛坊如来。
[#ここから2字下げ]
・このからだを投げだして冬山
・寝られない夜は狐なく
山から音させて冬木負うて
・どこかそこらにみそさざいのゐる曇り
[#ここで字下げ終わり]
愛想を尽かしたのか、樹明君も来なければ敬治君も来ない、誰も来ない。
しづかな一日、しづかな一夜。
十二月三十日
からりと晴れて、よーいとなあ――
樹明来、そして敬治来、三人いつしよに街へ。
酒、女、自動車、等、等、等。
インチキ、インチキ、インチキ、インチキ、インチキ。……
十二月三十一日
昼は敬治君と、夜は樹明君と酒らしい酒を飲んだ。
ひとり、しづかに、庵主として今年を送つた、さよなら。
[#ここから2字下げ]
・冬夜の人影のいそぐこと
・鉄鉢たたいて年をおくる
[#ここで字下げ終わり]
インチキ ドライヴ
昭和七年度の性慾整理は六回だつた、内二回不能、外に夢精二回、呵、呵、呵、呵。
底本:「山頭火全集 第四巻」春陽堂書店
1986(昭和61)年8月5日第1刷発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:小林繁雄
校正:仙酔ゑびす
2009年1月15日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全10ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング