[#ここで字下げ終わり]
古人がすでに言いきっている。油虫よ、私ばかりではないぞ、怒るな憎むな。
げんのしょうこという草は腹薬として重宝がられるが、何というつつましい草であろう。梅の花を小さくしたような赤い花は愛らしさそのものである。或る俳友が訪ねて来て、その草を見つけて、子供のために摘み採ったが、その姿はほほえましいものであった。
[#ここから2字下げ]
げんのしようこのおのれひそかな花と咲く
[#ここで字下げ終わり]
萩がぼつぼつ咲き初めた。曼珠沙華も咲きだした。萩の花は塵と呼ばれているように、曼珠沙華のように、花としてはさまで美しくはないけれど、何となく捨てがたいところがある。私は萩を見るたびにいつも故人一翁君を思い出す。彼の名句――たまさかに人来て去ねば萩の花散る――は歳月を超えて私たちの胸を打つ。
今日はあまりの好晴にそそのかされて近在を散歩した。そして苅萱を頂戴した。
素朴な壺に抛げこまれた苅萱のみだれ、そこには日本的単純の深さが漂うている。何の奇もないところに量ることのできないものがある。
露草の好ましさも忘れてはならない。まいあさ、碧瑠璃の空へ碧瑠璃の
前へ
次へ
全5ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング