水〔扉の言葉〕
種田山頭火
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【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)なおざり[#「なおざり」に傍点]
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禅門――洞家には『永平半杓の水』という遺訓がある。それは道元禅師が、使い残しの半杓の水を桶にかえして、水の尊いこと、物を粗末にしてはならないことを戒められたのである。そういう話は現代にもある、建長寺の龍淵和尚(?)は、手水をそのまま捨ててこ[#「こ」に「ママ」の注記]まった侍者を叱りつけられたということである。使った水を捨てるにしても、それをなおざり[#「なおざり」に傍点]に捨てないで、そこらあたりの草木にかけてやる、――水を使えるだけ使う、いいかえれば、水を活かせるだけ活かすというのが禅門の心づかいである。
物に不自由してから初めてその物の尊さを知る、ということは情ないけれど、凡夫としては詮方もない事実である。海上生活をしたことのある人は水を粗末にしないようになる。水のうまさ、ありがたさはなかなか解り難いものである。
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へうへうとして水を味ふ
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こんな時代は身
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