心共に過ぎてしまった。その時代にはまだ水を観念的に取扱うていたから、そして水を味うよりも自分に溺れていたから。
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腹いつぱい水を飲んで来てから寝る
[#ここで字下げ終わり]
 放浪のさびしいあきらめである。それは水のような流転であった。
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岩かげまさしく水が湧いてゐる
[#ここで字下げ終わり]
 そこにはまさしく水が湧いいた、その水のうまさありがたさは何物にも代えがたいものであった。私は水の如く湧き、水の如く流れ、水の如く詠いたい。
[#地付き](「三八九」第三集 昭和六年三月三十日発行)



底本:「山頭火随筆集」講談社文芸文庫、講談社
   2002(平成14)年7月10日第1刷発行
   2007(平成19)年2月5日第9刷発行
初出:「「三八九」第三集」
   1931(昭和6)年3月30日発行
入力:門田裕志
校正:仙酔ゑびす
2008年5月19日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランテ
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