当を食べたり景色を観たりしても、気分がごまかせない、あちらこちらを無理に行乞して二時帰宿、一杯ひっかけた、財布に五銭、さんや[#「さんや」に傍線]に一合しかない、行こう行こう、明朝はどうでもこうでも出立しよう、絶食もよし、野宿もやむをえない、――放下着、こだわるな、こだわるな、とどこおりなく流れてゆく[#「とどこおりなく流れてゆく」に傍点]、――それが私の道ではないか!
今朝、同室のおへんろさん二人出立、西へ東へ、御機嫌よう、御縁があったらまた逢いましょう。
新客一人、野宿のお遍路さんらしい。
――水のように[#「水のように」に傍点]、雲のように[#「雲のように」に傍点]。――
今日の功徳は銭三十三銭、米五合也、食べて泊って、そして一杯ひっかけて、煙草も買ったので、残るところは……心細いといえば心細い、その心細さで明日からは野に臥し山で寝なければならないだろう、三度の食事もあまりあて[#「あて」に傍点]にはなるまい!
十一月十六日 晴――曇、行程八里、越智町[#「越智町」に傍点]、野宿[#「野宿」に傍点]。
暗いうちに起きたが出発は七時ちかくなった、思いあきらめて松山へいそぐ、―
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