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ついてくる犬よおまへも宿なしか
石ころそのまま墓にしてある松のよろしさ
旅で果てることもほんに秋空
ほろほろほろびゆくわたくしの秋
一握の米をいただきいただいてまいにちの旅
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“自適集”
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十一月八日 晴――曇、行乞六里、伊尾木橋畔、日の出屋で。
五時前に眼が覚めた、満天の星のひかりである、家人の起きるまで読んだり書いたりする。
ゆっくりして七時すぎてから立つ、ところどころ行乞、羽根附近の海岸風景もわるくない。
奈半利貯木場、巨材が積み重ねてある、見事なものだ、奈半利町行乞、町に活気がないだけそれだけ功徳も少なかった、土佐日記那波の泊の史蹟である。
奈半利川を渡ると田野町、浜口雄幸先生の邸宅があると標札が出ている、それから安田町、神の峯遥拝[#「神の峯遥拝」に傍点]、恥じないではいられない、大山岬[#「大山岬」に傍点]、狭いけれどよい風光である、澄太君[#「澄太君」に傍点]を考えたのは自然であろう。
四時頃、都合よく伊尾木で宿につけた、同宿は同行一人、おばさんはよい人柄である、風呂も沸かしてもらえた、今日こそはアルコールな
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