して流れている(渡船賃は市営なので無料)。
徳島は通りぬける、ずいぶん急いだけれど道程はなかなか捗らない、日が落ちてから、籏島[#「籏島」に傍点](義経上陸地といわれる)のほとりの宿に泊った。八十歳近い老爺一人で営業しているらしいが、この老爺なかなか曲者らしい、嫌な人間である、調度も賄も悪くて、私をして旅のわびしさせつなさを感ぜしめるに十分であった!(皮肉的に表現すれば草紅葉[#「草紅葉」に傍点]のよさの一端もない宿だった!)
今日は興亜奉公日、第二回目、恥ずかしいことだが、私はちょっぴりアルコールを摂取して旅情をまぎらした。
同宿四人、修業[#「業」に「ママ」の注記]遍路二人、巡礼母子二人、何だかごみごみごてごてして寝覚勝な夜であった。
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(十一月一日)
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旅空ほつかりと朝月がある
夜をこめておちつけない葦の葉ずれの
ちかづく山の、とほざかる山の雑木紅葉の
落葉吹きまくる風のよろよろあるく
秋の山山ひきずる地下足袋のやぶれ
お山のぼりくだり何かおとしたやうな
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十一月二日 快晴、行程八里、星越山麓、あさひや。
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