しくてふさはしい。
老ルンペンといつしよにお寺の縁で休む、昼食は戴いた菓子四五片。
途中、都合よければ泊めて貰ふつもりでI君を訪ねる、折あしく大掃除で、手伝人も多勢で、腰をかける場所もない、挨拶もそこ/\にして飛びだした。
I君は相かはらずプチブルボツチヤンだつた。
呼坂行乞、そして今市に近いところで泊つた、この宿はほんたうにきたなくてうるさくて、同時にしんせつできやすかつた。
子供がゐる、猫がゐる、鶏がゐる、馬がゐる、蠅、蚊、等々等、いやはや賑やかなことだつた。
木賃は三十銭、賄はまず普通、三田尻のそれを上の中とすれば、これは中の中といふところ。
同宿は少々気のふれた乞食老人、下らなく話しかけてうるさいから、すまないけれど黙殺してやつた。
こんな宿にも盆栽の数鉢はある、鳳仙花、唐辛、蘭、万年草[#「草」に「マヽ」の注記]など、おしやべりの、きかぬ気の小娘の丹青[#「青」に「マヽ」の注記]だ、日本人はうれしいなと思ふ。
今夜は特に奮発して晩酌三合(いつもは二合)、いゝ気持で寝てゐるところを揺り起された、臨検だといふ、お役目御苦労、問はれるまゝに日本禅宗史を一席辯じて、おまはりさんと宿の
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