、十時から一時まで福川行乞、行乞がいやになつて、そこからまた汽車で徳山へ、二時にはもう白船居におさまることが出来た。
酒はうまい、友はなつかしい。
井葉子さんもずゐぶん年が寄つたと思ふ、それだけまた、その接待振が垢抜けしてうれしい、感謝合掌。
飲みすごしても、層雲を借覧して、句稿整理することは忘れなかつた、句は酒と共に私の生命の糧である。
[#ここから1字下げ]
今日の所得(銭十七銭、米一升三合あまり、これは白船君の奥様にむりにあげて、その代償として五十銭拝受)
身うちのものがいふ、――
『あんたもホイトウにまでならないでも、何かほかに仕事がありさうなものだが、……』
私は苦笑して心の中で答へる、――
『ホイトウして、句を作るよりほかに能のない私だ、まことに恥づかしいけれど仕方がない、……』
[#ここから2字下げ]
・いまし昇る秋の日へ摩訶般若波羅密[#「密」に「マヽ」の注記]多心経
・コスモス咲いて、そこで遊ぶは踏切番のこどもたち
・鍛冶屋ちんかんと芭蕉葉裂けはじめてゐる
煤け障子は秋日の波ですつかり洗つた
おもひでは波音がたかくまたひくく(末田海岸)
・もう秋風のお地蔵さまの首
前へ
次へ
全26ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング