日の御馳走(酢鮹、煮魚、里芋)
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・朝風の簑虫があがつたりさがつたり
・バスも通うてゐるおもひでの道がでこぼこ
・役場と駐在所とぶらさがつてる糸瓜
・かるかやもかれ/″\に涸れた川の
・秋日あついふるさとは通りぬけよう
・おもひでは汐みちてくるふるさとの渡し
 ふるさとや少年の口笛とあとやさき
 ふるさとは松かげすゞしくつく/\ぼうし
・鍬をかついで、これからの生《よ》へたくましい腕で
 おばあさんも出てきて話すこうろぎ鳴いて(M君に)
・相客はおぢいさんでつゝましいこほろぎ
   追加
 つかれてついてどこかそこらでをんなのにほひ
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 九月十二日[#「九月十二日」に二重傍線]

朝、鞠生松原を散歩する。
放下着、放下着、身心ほがらかほがらか。
六時出立、我ながらサツソウとしてあるく、見渡すかぎり出来秋のよろこびだ(実際問題としては豊年飢饉[#「豊年飢饉」に傍点]だらう!)。
末田海岸の濤声、こゝにも追懐がある。
荷馬車にひつかゝつて、法衣の袖がさん/″\にやぶれた。
彼岸花が咲いてゐる、旅の破法衣と調和するだらう。
富海から戸田まで汽車
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