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十二月廿七日[#「十二月廿七日」に二重傍線]
何といふ落ちついた、そしてまた落ちつけない日だらう。
私は存在の世界[#「存在の世界」に傍点]に還つてきた、Sein の世界にふたゝびたどりついた、それはサトリの世界ではない、むしろアキラメの世界でもない、その世界を私の句が暗示するだらう、Sein の世界から Wissen(道徳[#「道徳」に傍点]の世界)の世界へ、そして 〔Mu:ssen〕(宗教[#「宗教」に傍点]の世界)の世界へ、そしてふたゝび Sein(芸術[#「芸術」に傍点]の世界)の世界へ。――
それは実在の世界だ、存在が実在となるとき、その世界は彼の真実の世界だ。
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十二月廿七日
死をまへに、やぶれたる足袋をぬぐ
(この句はどうだ、半分の私を打出してゐる)
・晴れてきてやたらに鴉なきさわぐ
ほろにがいお茶をすゝり一人である
・身にせまり人間のやうになきさわぐ鴉ども
冷飯が身にしみる今日で
・草もわたしも日の落ちるまへのしづかさ
追加一句
荷づくりたしかにおいしい餅だつた
・枯れた山に日があ
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