老の温情そのものであるカワセを受ける、そして買物また買物、買へるだけ買つた。
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火鉢 三十銭 五徳 八銭……
白米 四十八銭 酒 八十五銭……
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いそがしくてうれしい、うれしくていそがしい。
老来、人のなさけ[#「人のなさけ」に傍点]がわかる! 雑木紅葉がうつくしいな!
樹明来、つゞいて黎々火来、すべて予定の行動也。
酒あり下物あり、友あり火あり。
何ヶ月ぶりの魚か、その魚は鰯(十尾九銭だつた)。
樹明の酒八合、黎々火のカーネーシヨン六本。
いつしよに黎々火と寝る、フトンがないからでもある。
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今日の夜明けの星とぴつたり
稲刈日和の、道ばたのをとことをなごがむつかしい話
・柚子をもぐ朝雲の晴れてゆく
稲刈るそこををとこふたりにをなごがひとり(稲刈の写生也)
・秋日にかたむいてゐる墓場は坊さんの
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十一月二日[#「十一月二日」に二重傍線]
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・雨がおちるいそがしい籾と子供ら(農村風景の一つ)
笠は網代で、手にあるは酒徳利(酒買道中吟)
・月夜あるだけの米をとぐ
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