る、主人が昨日二階にあがるより一杯持つてきて下さつた時のやうに、うまい/\ありがたい/\。
一浴して一杯やる気持は何ともいへませんね。
牛田風景は三方が山、南が河の、雑音のない閑静である。
湯上り浴衣にヘルメツト帽。
夜は独壺君来訪、三人で飲みながら話した、とても愉快な一夜だつた。
悪夢に襲はれて寝言をいひつゞけたことが私自身によく解つてゐる、これはとても不愉快だつた。
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・兵営の柳散らうとする騷音
 秋の野へうごくのはタンク
・旅も蓮の葉の枯れはじめた
 蓮の葉のやぶれてゐる旅の法衣も
・秋風の驢馬にまたがつて
・朝はすこし萩のこぼれてゐる
・空瓶屋空瓶だらけへ秋日がまとも
・雑魚の列も水底の秋
・朝がながれるまゝに流れてくる舟で
・秋風の家をそのまゝうごかしつゝ
・かぼちやとあさがほとこんがらかつて屋根のうへ
・秋空に雲はない榾を割つてゐる
・卵を産んだと鳴く鶏の声が秋空
・たゝみにかげはひとりで生えた葉鶏頭
・へたなピアノも秋となつた雲の色で
   追加
・有明月夜の葦の穂の四五本はある
   再録
・鍬をかついで、これから世の中へたくましい腕
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