きたないのはぜひもない。
隣家のラヂオを蚊帳の中に寝ころんで聴く、三十三間堂柳の佐和利、泣くわ/\。
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・こゝで寝るとする草の実のこぼれる
よい娘さんがゐる村のデパートで
・萩さいてそこからなんとうまい水
・山寺のしづけさは青栗もおちたまゝ
おべんたうたべてゐるまうへつく/\ぼうし
・若竹伸びきつて涼し
地べたへべつたりはらばうた犬へ西日
・旅のつかれもほつかりと夕月
・蚊帳のなかまで月かげの旅にゐる
月が山の端に安宿のこうろぎ
・旅も月夜の、おとなりのラヂオが泣いてゐる
敬治居出立
・からりと晴れた法衣で出かける
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八月三十日[#「八月三十日」に二重傍線]
寝すごした、それほどよく眠れたのである。
朝のうちは伊佐行乞、それから麦川へ、途中あまりだるいから村の鎮守の宮で昼寝、涼しい社殿だつたが、村の悪童共の集合所でもあつたので騒々しかつた、それでも二時間ぐらゐは寝たらう。
おひるは報謝のお菓子二きれですます。
二時から四時まで麦川行乞、西市へ越すつもりで山路にかゝつたが、平原といふところで宿を見つけたので泊つた、豊田屋、
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