/\いつしよに樹明居襲撃ができなくて。
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   改作
・からりと晴れたる[#「る」に白三角傍点]法衣で出かける
   追加二句
 みんな寝てしまつてゐるポストのかげがはつきり
 見おくるかげは見えない松むし鈴むし(樹明君に)
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 八月十五日[#「八月十五日」に二重傍線]

晴、宿酔ほがらか[#「宿酔ほがらか」に傍点]である、昨夜、最後の一片まで賞味した鮒のあらひのうまさがまだ残つてゐる!
樹明来、敬坊不来。
夜、樹明君といつしよに街へ、水哉居を襲うてビールを頂戴する。
樹明君泊る。
ガチヤガチヤ、ガチヤガチヤ、轡虫が鳴きはじめた。
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 きのふの酔がまだ残つてゐるつく/\ぼうし
・ま昼ふかうして鳴子鳴る
・ゆふべの夏草をふみわける音がちかづく
・日ざかりあるくはつるんだ虫で
[#ここで字下げ終わり]

 八月十六日[#「八月十六日」に二重傍線]

朝風は秋風だ。
方々から便りをもらつたりあげたり。
買物いろ/\、品多くして銭少し。
出勤した樹明君が到来のビールをさげてまたやつてくる、敬坊が酒とかしわとを持つてくる。

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