山村の朝は何ともいへないすが/\しさだ。
今日は樹明居徃訪を約してゐる、樹明君も待つてくれてゐるだらうか、同行の敬治君も待ちあぐんでゐるだらう。
急テンポで於福行乞、途中また堅田行乞、急いで帰庵したが、五時を過ぎてゐた、置手紙二つ、一つは樹明君が待つてゐるといふ、他は敬治君が待ちあぐねたといふ。
おそかつた、すまなかつた、くたびれた、がつかりした。……
昼食として桃を食べた、おいしかつた、気附薬として焼酎半杯、これはむろんうまい。
         ×    ×    ×
行乞七日間、懸命に稼いで(私のやうな行乞はまつたく筋肉労働である)残つたものは、銭が壱円四十銭あまり、米が三升ばかりだつた。
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今日の所得(銭四十七銭、米一升六合)
行程八里。
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 八月十四日[#「八月十四日」に二重傍線]

於福から八里歩いて戻つて、戻るなり樹明居へ押しかけて、お盆のお経をあげてお盆の御馳走になつた、たいへん酔うた、道がわからなくて樹明君に途中まで送つて貰つた。……
樹明君ありがたう、敬治君すみませんでした、二時間も待たせて、そしてとう
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